プロジェクトストーリー

次世代型ワークプレイスを創出。

阪急・阪神経営統合が実現した2006年、老朽化の進む大阪神ビルディングと新阪急ビルを、一体化した複合ビルとして建て替える計画がスタートした。
阪急阪神ビルマネジメントのミッションは、オフィスコンセプトとして掲げられた「つながる梅田の中心」「おもてなしサービス溢れるビル」「ウェルビーイングを実感」を体現すること、そして、その価値を評価してくれる企業を「大阪梅田ツインタワーズ・サウス」に誘致することである。

中西 大也
近藤 駿
萩生 貴大

※所属や担当は、プロジェクト当時のものです。

Episode 1

オフィスのコンセプトを策定し、
施設や機能の細部にまで行き渡らせる。

「梅田1丁目1番地計画」の名の通り、本プロジェクトの場所はまさに大阪梅田の一等地だ。しかし、だからといってテナントの誘致が容易なわけではない。周辺エリアで最高ランクの賃料に見合う価値を実感してもらうこと、そして、実物を見ることのできない竣工前にテナントを誘致するにあたり、どうやって入居後の姿をイメージしてもらうか、ということが課題だった。
開発計画を先導する阪神電気鉄道、阪急電鉄(現在は阪急阪神不動産)とともに、リーシング責任者を務める中西は、阪急阪神ビルマネジメントが長年現場の最前線で培った経験や顧客の声を提案。そこで策定された「つながる梅田の中心」「おもてなしサービスのあふれるビル」「ウェルビーイングを実感」という3つのオフィスコンセプトを、施設や機能の細部にまで行き渡らせるための取り組みを次々と実行していった。

まず「つながる梅田の中心」については、「大阪梅田ツインタワーズ・ノース(旧梅田阪急ビル)」「阪急ターミナルビル」「ハービスOSAKA」などの同社管理物件ですでに導入されている「阪急阪神ワーカーズサービス」をはじめとした各種サービスと連携。大阪梅田における企業活動やオフィスワーカーの生活を、阪急阪神東宝グループの総合力を活かして広範囲にサポートすることを目指した。
次に、「おもてなしサービスのあふれるビル」として、12階にオフィスワーカー専用フロア「WELLCO(ウェルコ)」の設置が決まった。オフィスワーカーや入居企業の多様なニーズに応えるオフィスコンシェルジュサービスのほか、商談、食事や懇親会といったシーンで活用できるプレミアムラウンジ、ワーカーズカフェが設置されることになった。さらにハード・ソフトの両面から防災対策を徹底し、非常時におけるテナント企業の事業継続と、オフィスワーカーの安全確保の取り組みが進められた。

最後に「ウェルビーイングを実感」では、執務空間はもちろんのこと、オフィスワーカー一人ひとりが心身ともに健康な状態であるよう、前述の「WELLCO(ウェルコ)」に加え、憩いと潤いのある緑豊かな屋上庭園など、ゆとりある共用空間が整備されることになった。
これらは、阪急阪神ビルマネジメントはもちろん阪急阪神グループにとっても、前例のない取り組みばかりだ。だからこそやる意義があると、中西は考えていた。どれだけ魅力的なオフィスビルであっても、極論をいえば、竣工した瞬間から陳腐化が始まる。時代のニーズにあわせ、アップデートし続けなければならない。そのために自分たちの存在意義があるのだ、と。信念をもって、プロパティマネジメントの側面からプロジェクトを推進した。

Episode 2

魅力の押し売りになってはいけない。
顧客に寄り添い、本質的なニーズに迫る。

中西をリーダーとするリーシングチームは、2018年に組織された。そのメンバーのひとりが、当時入社3年目だった萩生である。入社2年目までの担当業務が運営管理だったこともあり、成果が目に見えてわかるリーシング専属業務、しかも西日本最大規模の貸室面積を誇るオフィスビルに携わることに、彼は大きなプレッシャーを感じていた。
「大阪梅田ツインタワーズ・サウス」が有するさまざまな施設や機能が、顧客にどんなベネフィットをもたらすのか。まずは自分のなかで仮説を立てるところから始めた。そして、その仮説を検証するために、中西や先輩社員の商談に何度も同席し、顧客のリアルな声を蓄積していった。

メインで商談を進めるようになってからも試行錯誤は続く。当初は商談時間の8割を自身のセールストークが占めていたが、その割合を逆転させ、相手の発言機会を増やすよう心がけた。建物はまだ完成しておらず、実体がない状態でのプロモーションは魅力の押し売りに陥りがちで、そうなると相手の本音はなかなか引きだせない。顧客の多くは、自社のさらなる成長のためにオフィス移転を検討している。顧客が掲げる目標やビジョンに、とことん寄り添う必要があると痛感した。
また萩生は、プレゼンテーションルームの設営に携わることにもなった。プレゼンテーションルームとは「大阪梅田ツインタワーズ・サウス」のプロモーション動画を上演するミニシアターのような施設だ。視覚的なイメージの伝達を目的に、ビル単体の模型に加えて大阪梅田の都市模型まで設置された。それまではタブレット端末を片手に顧客のもとへ赴き、小さな画面に表示される画像と口頭での説明のみで営業活動を行っていたが、プレゼンテーションルームによって物件の完成イメージがさらに鮮明となり、伝わりやすさが格段に増した。また、リーシング担当としての提案の幅が広がり、顧客の本質的なニーズに迫ることにもつながった。
コロナ禍においてリモートワークが急速に浸透し、オフィスの在り方は大きく揺らいだ。しかし、その揺り戻しとして、対面でのコミュニケーションが再評価され、ニューノーマル時代のオフィスづくりに対する期待感が高まってきている。オフィスワーカー同士の交流を促進し、オフィス改革から働き方改革を促進する「大阪梅田ツインタワーズ・サウス」の影響力は、間違いなく大きい。その新たな価値を、より多くの顧客に提供するために、萩生はリーシング業務に邁進した。

Episode 3

竣工や開業はゴールではない
むしろスタートラインに立ったばかりだ

運営管理担当の近藤は、2020年から本プロジェクトに加わることになった。ビル管理規則の作成、委託会社との契約手続き、屋上庭園やエントランスの開放時間の検討など、「大阪梅田ツインタワーズ・サウス」が完成したあとの細かいルールづくりを進めていく。
なかでも苦労が大きかったのが、オフィスワーカー専用フロア「WELLCO(ウェルコ)」の運用だ。前例のない取り組みであり、当然グループ内にノウハウは存在しない。たとえば、入室時のドレスコードは設けるべきなのか、カフェのメニューの単価はいくらに設定すべきなのか、他社の施設にも足を運び、あらゆる運用事例を研究しながら、自らの知識を深めていった。

ランニングマシンやバイク等の機器を備えたフィットネスエリア、コーヒーやプロテインスムージーのほか、夜にはアルコールも提供するバーエリアなど、オフィスワーカーの創造性・生産性を向上させる場として、さまざまな機能がひとつのフロアに集約されている。
また、搾乳室として活用できるマザーズルームは、産後女性の早期の職場復帰を支援するためのものだ。利用者は清潔な部屋で搾乳することができ、冷凍庫での母乳の一時保管も可能。オフィスの共用施設としての搾乳室設置は全国的に見ても珍しく、さまざまなリスクが想定されたが、近藤はチームメンバーと顧問弁護士に相談しつつ、実現に向け検討に検討を重ねた。

そして2022年、オフィスコンセプトに「つながる梅田の中心」「おもてなしサービスのあふれるビル」「ウェルビーイングを実感」を掲げ、「大阪梅田ツインタワーズ・サウス」が完成した。とはいえ、阪急阪神ビルマネジメントにとって、竣工や開業はゴールではない。むしろ、まだスタートラインに立ったばかり、といったほうがいい。同社が今後展開するサービス次第で、「大阪梅田ツインタワーズ・サウス」に対する評価はがらりと変わる。そのサービスを現時点で明確に打ちだすのは難しいが、これからも当初決めたコンセプトを体現し続けようと、近藤は心に誓うのだった。
前例はない。だからこそやる意義がある。ゼロからイチを生みだす仕事は、プロジェクトメンバーを確実に成長させた。それぞれが「大阪梅田ツインタワーズ・サウス」で得た経験は、新たな挑戦への原動力となるはずだ。

「大阪梅田ツインタワーズ・サウス」が満床稼働した場合、約1万人のオフィスワーカーがそこで働くことになる。彼らは電車に乗って通勤し、仕事終わりには、周辺の商業施設でショッピングやグルメを楽しむこともあるだろう。それらのアセットを抱え、グループ内連携によって多方面から顧客満足を実現するのが阪急阪神ビルマネジメントの最大の強みといえる。大阪梅田を起点とし、阪急・阪神の沿線地域をさらに活性化させるためにも、同社が果たすべき使命は大きい。